2014年3月27日木曜日

ここがヘンだよ!【前線の動き】

こんにちは。
フジモンのゴールから早3週間。
マリノスは3勝1敗の勝ち点9で、いまのとこ3位をキープしています。
ということで、これまでの試合を簡単に振り返ってみます。

エスパルス戦は多くのチャンスがありながら追加点を奪えず、
大前の偽ゴールにヒヤヒヤさせられた試合でした。
あの「指差し」に一体どれほどの人が騙されたことか…。
はい。世の中、どんなビッグクラブも事故で1点は失うものです。
ですから、いかにして2点以上を奪うかが勝ち点を積み上げるカギになるわけです。
そういう意味で、ヴォルティス戦は理想的でした。
セットプレーで2発。終了間際にさらなる追加点。そして無失点。
こういう試合運びができれば、今シーズンも間違いなく優勝争いができるはず!

…しかし現実は甘くありませんでした。

なんなの!!あのヴァンフォーレ戦は!!
いや、ヴァンフォーレはいいよ!
あれがヴァンフォーレの「スタイル」なんだから。
内容がどうであれ、あのサッカーで勝ち点を稼いでいくことを信念としてやっているのだから。
でも、マリノスは違うよね?
あんなサッカー、マリノスの「スタイル」じゃないでしょ!
どうせ負けるんだったら、自分たちの信念を貫かんかい!!
次につながる試合をせんかい!!

そう思いたくなる試合でした。
二度とあんな試合は見たくないですし、早く忘れ去りたいくらいですが、
せっかくの機会なので振り返ってみます☆☆☆

ヴァンフォーレ戦、いろいろとおかしな点があったのですが、
まずはこのシーンから。前半33分のとこです。
前線の4人に注目してみてください。ちなみにボールホルダーは下平です。

【ここがヘンだよ①】4人が縦に一直線に並んでいる
【ここがヘンだよ②】FWのスタートポジション低すぎじゃない?
【ここがヘンだよ③】最初から相手DFから離れすぎじゃない?

①4人が縦に一直線に並んでいる
→4人で前後の関係を作らなければならない。
相手ゴールに近づくほど、マークを引きはがす作業が必要になるわけです。
そのためには、まず相手DFを撹乱させないといけません。
その一つの方法が「前後の関係を作る」というものです。
バイタルエリアの前と後ろでそれぞれ選手がいれば、相手DFは「裏へのボール」と「くさびのボール」の両方を意識する必要が出てくるからです。
その結果、DFのポジショニングがバラバラになって、ギャップ=スペースが生まれるわけです。
で、ボールを動かされるとマークもバラバラになるわけです。
逆に言えば、DFからすると自分たちが一直線でいられる=正規のポジションでいられるのは非常に楽なわけです。


②FWのスタートポジション低すぎじゃない?
→攻撃の基本は「深さ」と「幅」を作ること。そして前線の仕事は「深さ」を作ること。
DF視点からすると、味方との距離が遠いほど守備がやりにくくなります。
わかりやすいシーンで言うと、「学と1対1を作られているのに自分のカバーをしてくれる味方DFがいない」といったところでしょうか。
味方が近くにいないと、チャレンジ&カバーができません。
学のようなドリブラーは、カバーしてくれる選手がいなければ終わりです。
ということで、基本的に味方が近くにいればいるほど(正規のポジションにいるほど)、守備はやりやすいのです。
ですから、攻撃側としてはいかにして相手DFを広げるかがポイントとなります。
その方法の一つが、FWに高い位置をとってもらうことです。
で、ロングボールを蹴ったりして、相手のDFラインを下げていく、と。
それなのに、4人ともポジションが低すぎる!
相手はくさびのパスだけ意識すればオッケーな非常に楽な展開…。


③最初から相手DFから離れすぎじゃない?
→相手の視野から外れたときにチャンスは生まれる。
もし仮に4人がDFの近くにいれば、裏へのボールに先に触れる可能性が高まるし、
くさびのパスを受けるためのスペースも確保できる。
でも、これだけ距離があると、相手の視野から外れないので、さっさと対応をされてしまいます。
一人でもいいからDFに近いポジションをとっていれば、攻撃の選択肢が増えていたと思います。

結局このシーンは、下から2人目の翔さんがその場でパスを受けただけで、何も起きませんでした。


さてさて、次の画像からはサクサク行きますよ!笑
俊さんがパスを受けて、前線の翔さんとヒョーが動き出すシーンです。




 二人とも裏への動き出しを選びました。
ここまでは別にいいんですよ。
でもここで問題なのは、先ほどの【ここがヘンだよ①】です。
これ、二人ともほぼ同じ直線にいます。
この時点では別に構わないんですが、
最終的にはどちらかが前、どちらかが後ろのポジションを取らなくてはいけません。
マストではありませんが、その方がスペースを有効に使えるのです。
しかし実際には…



そのまま平行に走ってしまいました。
俊さんはあきらめて隣のカンペーにパスしてます。
どちらかが裏への動き出しをフェイントに使えば、黒丸部分のスペースを使えたはず。
もしくは黒丸の右にいる優平が空いたスペースに走りこんで、前線からの落としを受けるとか。
まぁ結果論なんですが、前線二人が作り出したスペースを使おうとする意識もないんですよね。
コンビネーションの欠片もないというか…。残念。

次もまったく同じシーンです。

俊さんがボールを受ける→前線の二人が動き出す。


同じ方向に動き出す→…



→ボールは届かずクリアされる。
で、問題なのはさっきと同じように、空いたスペースに誰も走りこんでいないこと。
二人のうちどちらかが止まってボールを受けるとか、三人目の動きで誰かが入ってくるとか、そういった工夫がない。
ちなみに黒丸左下にいるのは優平です…。せめて走り込めよ…。運動量で勝負する選手でしょうが…。

いやね、もはや個人が動きたいように動いているだけで、
連動性が一切無いわけですよ。
勝負に出るパスもないし、
崩すための意思統一も見られないし、
そういう意識が足りないところがヒジョーに残念でした。
まぁヴァンフォーレも良かったんですけどね。

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もう少し続きます。
ここからが大事なとこです。
ヴォルティスとの試合から良かったとこを挙げて終わりにしたいと思います。

まずはこれ。
先ほどの【ここがヘンだよ】をすべてクリアしているシーン。
左端の勇蔵がボールを受けるとこです。
で、右端がフジモン。
よく見ると、フジモンも含めて3人が前線にいますね。
この時点で【ここがヘンだよ】の②と③はすでにクリアしています。
問題は①です。3人とも平行な中、ここからどうやって「前後の関係」を作り出すか。

 ここ、すごく細かいんですが、フジモンの動き出しに注目です。
っていうか、画像じゃ伝わらないと思いますので、どうにかして実際の映像を見てください(笑)
これ、ビミョーに裏に抜けだそうとしているんですよ。
ちょっと体重を相手ゴール側に乗せてるんです。
で、マークのアレックスもそれにつられて、裏への動き出しを意識してしまう。



でも、それはフェイントで、実際はくさびのパスを受けるのがフジモンの狙い。
プッシュアウェイって動きですね。
で、アレックスは見事に動き出しが遅れてしまうと。
さて、フジモンがくさびを受けにいきました。
では上にいる翔さんはどうするかというと…



フジモンが作ったスペースに走り込もうとします。ナイスアクション!!前後の関係が完成です。
と同時にフジモンはフォローに来たカンペーにボールを落とします。
あとはカンペーがスペースにパスを送るだけ!!!



なのにミス!!!!ボールが真上に行っちゃったよ!!!!もったいないよ!!
とはいえ、いいコンビネーションでした。
しかも、さらに付け加えると、
フジモンはパスを出した後にちゃんと次の動き出しをしているんですよ。
おそらく、翔さんが裏でボールを受ける→サイドに流れる→中央にクロス→フジモンがシュート…といったとこでしょうかね。
このときフジモンが描いたゴールまでのイメージは、間違いなくチームメイトも共有できていたはずです。

次も同じシーンです。

 中町がボールを受ける。
右端がフジモン。






プッシュアウェイ。


フジモン、くさびを受ける。


フジモン、中町にリターンパス。
空いたスペースに翔さんが走る。
中町がスペースにパスを出す…というコンビネーション。
残念ながら、翔さんまでボールは来ませんでしたが、これもいいコンビネーションでした。

と、こんな感じです。
ちゃんと連動してたんですよ。ヴァンフォーレ戦を除いて。
結局、ヴァンフォーレ戦とそれまでで何が違ったかと言うと、

「学とフジモンがいなかった」

ということになるでしょうか。
学についてはtwitterの方で簡単に説明した通り。
そしてフジモンについていえば、ヴォルティス戦のゴールも含めた「動きの質」。
これに尽きると思います。
すなわち、ヒョーと優平のセットでは個の力という点で弱いのだと思います。
試合を決定づけられる選手がいないと、ヒョーも優平も輝かないのかなぁと。

次の鹿島戦、誰がスタメンになるかわかりませんが、
いずれにしても、ヴァンフォーレ戦の反省をどうやってプレーに反映させてくるか、
とても楽しみになりました。

心が少し晴れやかになったところで、今日はおしまいにします。


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おまけフジモン。

ヴォルティス戦、フジモンはプッシュアウェイやりまくりで、アレックスを完全に操っていました。
で、ちょっとおもしろいシーンがあったので、それを紹介してほんとの終わりです。

俊さんがボールを受ける。
左上がフジモン。
わかりにくいかもしれませんが、フジモンの隣がアレックスです。



フジモンのプッシュアウェイ発動!!
アレックスは裏へつられる!!
そして、フジモンの動き出しに遅れてしまう…!?



アレックス、まさかのステイ!!!棒立ち!!!
もはやフジモンの動き出しについていこうとさえしません。
下手に動いて自分の裏にスペースを作ってしまうのを嫌がったのかもしれませんね。

左足のテクニックに目が行ってしまいがちですが、
本当にレベルの高い選手です。
鹿島戦もやってくれるんじゃあないかと期待しています。



お わ り

2014年3月4日火曜日

フジモンのゴールに集約されたマリノスの強み


マリノス初勝利!
しかも新戦力2人のゴラッソ!!
危ないシーンもありましたが、マリノスが”主導権”を握って快勝しました。
広島と全北の試合内容から、
大宮もハイプレスをかけてくるだろうな…ヤバイな…と思っていたのですが、
正直、チームとしてのレベルが違いましたね。
この程度のプレスでしたら難なく突破できますし、
また、この程度の相手であれば、ハイプレスをかけて難なくボールを奪取することができます。
そういう力を今のマリノスは持っている。それが再確認できた試合でした。

ということで、
今回取り上げるシーンは、マリノスの「プレス」と「戦術・まなぶ」についてです。
たった1つの場面しか取り上げませんが、ちょっと画像が多いのでご承知おきを…。

さて、前半15分。
今シーズンの初ゴールが決まった場面です。
どういう流れでフジモンのゴラッソにつながったのか。
その過程の中に、マリノスの「強み」がいくつも発揮されていました。

では、こちらからどうぞ。
大宮がボールを保持していて、左サイドにバックパスが渡った場面です。
まず注目すべきは、フジモンの動きです。
すかさず全力で追いかけていきます。
さらに、それに応じて中央の俊さんと中町は相手DFのポジショニングを確認。
次のプレスのかけ方をすでにイメージしています。

結局はCBにボールを戻した大宮。
フジモンに追っかけられた…だけではありません。
俊さんとカンペーが横パスを狙っていますし、
翔さんもプレスバックをしっかりやっています。
ですから、CBにパスするしか選択肢がなかったわけです。

相手にチャンスを与えなかったという点では成功したマリノスのプレス。
しかし、問題はここからです。
ボールを奪わなくては意味がないのです。
あくまでサッカーはゴールの数で勝敗が決まるのですから、
攻撃のための守備をしなくてはならないのです。
ここでは、大宮がCB間でパス交換をしています。
その間に、マリノスは「4-2-3-1」のセットポジションへと修正していきます。
マークする選手を確実に捕まえられる距離間を作っているわけです。

はい。完全に適切なポジショニングをとりました。
で、ボールをどこで奪うのか、その奪い所っていうのは大体決まっていて、
相手のSBにパスを出させる、もしくはロングボールを蹴らせるといった辺りです。
今回、マリノスはどうしたかというと…

まずはサイドに追い込もうとしました。
そのために、翔さんが中側からプレスに行きます。
しかし、ここで俊さんがそのプレスを抑えようとしています。
一体なぜ…?
ちょっと画像が複雑になっているので、簡単に説明します。
まず、翔さん・俊さん・フジモンの3人のポジショニングによって、
①赤の網目の部分がシャットアウトされていて、そのエリアにはパスを出せなくなっています。(ワンサイドカットってやつです)
その結果、ボール保持者は縦パスか左SBへの横パスしか選択肢がありません。
しかし、同時にNAKAMACHI・パンゾーのポジショニングによって、
②縦パスしてもカットされる可能性が大となっています。
つまり、もはや左SBにパスするしか選択肢がないわけです。
先ほどのシーンで俊さんが翔さんを抑えた理由は、
わざとボール保持者をもう少し前まで持って来させたかったからでしょう。
この状態であれば、俊さんと翔さんでボール保持者をほぼ囲めていますが、
もし翔さんが早めに追い込みすぎたら、逆サイドに逃げられていたかもしれませんからね。

さて、完璧なプレスでボールの奪い所を作れたわけですから、
ここでフジモンはがっつりプレスに行きます。
が、残念ながら逃げられてしまいます。
キーパーにバックパスされてしまったのです。
残念!!
でも、これはこれでOKなわけです。
その理由もこの後わかりますが、
一応、大宮の状態をまとめるとこんな感じです。
SB「プレスきついから、DFラインからボールつないでいこう!」
→CB1「OK。おまえ頼むわ!」
→CB2「いや、おまえが頼まれたんだから、おまえがやれや!」
→CB1「こうなったら縦パス通したるわ!!」
→CB1「やべぇ。皆マークされてるし。サイドに逃げよう。」
→SB「またオレ?プレスきついのよ…。CBもダメだし…。もうキーパーに任せるわ…」
→GK「…こいつら、ボールつないでもチャンス作れねぇじゃん…こうなったら…」

GK「中盤も省略して、伝家の宝刀ロングボールや!!!」
こうなるわけです。
当然、GKにパスが渡るときにはマリノスのアタッカー陣がプレスに行っているので、
GKはロングボールを蹴るしかないわけです。
ところがどっこい、ここでマリノスの強みが出るわけですね。

勇蔵!!!
マリノスには空中戦にめっぽう強い2人が揃っています。
ですから、プレスをかけてボールを奪えるのならそれでOK。
もし奪えなくても、相手を焦らし続けてロングボールを蹴らせれば、それでもOK。
まさにハイブリッドディフェンス!
すべてが狙い通り。
後はセカンドボールを拾えばいいだけ。
そこにはNAKAMACHIがちゃんとポジションをとっています。

見事ボールをキープ!
素晴らしい2人の関係性です。

ただ、奪ったはいいのですが、
マリノスの選手がお互いに近すぎました。
そこで俊さんは縦に走って「深さ」を作り、
フジモンはサイドに移動して「幅」を作りました。

で、フジモンがボールを受けたのですが、
大宮のプレスが2人来ているのと、NAKAMACHIとの距離間が近すぎて、
どうしようもない状態。
並みのプレイヤーであれば、プレスに引っかかる→スローインという流れだったでしょう。
でもフジモンは違う!

トラップ1つで完全にプレスを無効化しました。
小さな黒丸がボールです。
あえて大きめなトラップをすることで、左側に空いているスペースへ見事に逃げたのです。

当然、がら空きの逆サイドへ。
この一連のプレーで、少なくとも大宮の選手たち6人は動き直しを余儀なくされました。

さらに、驚きのプレーは続きます。
パスを受けたボンバーが出したパスです。

左サイドに下平がいますから、当然そこにパスを出すと思いきや…

なんと!
下平を飛ばして、サイドに張っていたまなぶにパスを通したのです!
「ゴールの予感…」
このパスを見た瞬間、ぼくは心臓がドクンと鳴りました。
画像をよく見て欲しいのですが、完全に「まなぶモード」に入っています。
丸で囲んだ大宮の選手2人が戻ってきてはいますが、前には1人しかDFがいません。
しかし、下平が駆け上がってくるため、そのDFはほぼ居ないに等しい状態。
翔さんと俊さんも裏へと走っているため、CBも食いつけない。
あとは、まなぶがドリブルで中に入ってきてシュートorラストパス。
ゴールの確率が一気に上がった瞬間です。
ボンバー素晴らしい!!

で、まなぶは後ろから来たDFをかわしてペナに侵入!
この時点で決定機確定!!

後ろには俊さんもサポートに入っている。
あとはシュートか俊さんにラストパスを送るのみ…!!

…が、惜しくも後ろからのスライディングに引っかかってしまう!
ボールがこぼれるっ!…



フジモン!






このゴールまでの過程を説明するのに、フィールドプレイヤー全員の名前が出てきています。
まさにチーム全員で奪い取った”ゴラッソ”だったのではないでしょうか。